平成30年度施政方針
平成30年第1回東広島市議会定例会 市長開会挨拶
平成30年2月13日
平成30年度 施政方針
平成30年第1回東広島市議会定例会の開会にあたり、市政運営に関する私の所信を申し上げますとともに、市長就任から極めて短い期間でございましたので、骨格予算として精査いたしました平成30年度当初予算の概要及び関連施策についてご説明し、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
はじめに
私は、この度、市民の皆様をはじめ、各方面からの負託をいただき、平成30年2月5日に第5代東広島市長に就任いたしました。
東広島市は、昭和49年の市制施行以来、「賀茂学園都市建設」、「広島中央テクノポリス建設」の2大プロジェクトを推進することで、広島大学の統合移転などの学術研究機能の集積が進み、産業基盤の整備、高速・広域交通ネットワークなどの都市基盤の充実を背景に、全国から注目を集める成長都市として、飛躍的な発展を遂げてまいりました。
人口減少・超高齢化が進むわが国において、地方圏で人口増加が続く自治体は稀であり、今日に至るまちづくりに尽力いただきました諸先輩方のご労苦に、まずは敬意を表するものでございます。
こうしたまちづくりの基本的な方向性につきましては、今後も継承してまいる所存でございますが、IoT/AIなど、情報通信技術の進化を背景として、第4次産業革命と言われておりますような、社会に革新的な変化をもたらす新たな技術の急速な普及が進んでおります。
同時に、わが国においては、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く社会の姿として、ビッグデータを踏まえたAIやロボットなどの先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れることにより、地域、年齢、性別、言語等による格差を解消し、多様なニーズにきめ細かく対応したモノやサービスが提供される社会である「Society5.0(ソサエティ5.0)」が示されており、その実現を目指して、産学金官の連携による取組みが活発に進められているなど、私たちの社会は大きく変わろうとしております。
このように、激動する社会経済情勢の中で、東京圏へのヒト・モノ・サービスの一極集中が続き、大きな変革期にある今後の地方行政は、より一層厳しい選択を迫られる状況が続くと考えております。
市政を預かる身といたしましては、市民の皆様が住んで良かったと思えるまちづくりを推進いたしますとともに、次の世代を担う子どもたちに、将来への希望を心に抱くことのできる、誇りある東広島市を引き継いでいくことが私の使命であると考えております。
この東広島市には、内陸部の山々や美しい田園、瀬戸内海など、居住地域を包むように広がる風光明媚で豊かな自然環境、若者が集い、新たな社会的価値を創造する大学などの知的資源をはじめ、自動車関連、情報通信機器、電子部品などの高度なものづくり産業の集積、先に「日本の20世紀遺産20選」に選定されました、西条の酒造施設群に代表される歴史的・文化的な資産、さらには、たゆまぬ教育研究に裏打ちされた伝統ある教育や、市内全域における住民自治協議会の活動など、多くの地域資源や魅力がございます。
これらを最大限に活用し、地域間競争の中で未来につながる優位性を形成するために、地方創生の潮流を追い風として成果重視の行政経営を推進し、市全体の成長を地域の活性化に波及させていくことで、県央の中核都市として存在感を高め、「選ばれる都市、東広島」の実現を目指してまいります。
また、人口の集中が進む中心部と、過疎化が進む周辺部の状況など、各地域における現状と課題を踏まえ、まちづくりの主役である市民の皆様とともに、安全・安心で希望に満ちた地域社会の形成に取り組んでまいります。
そのために、これまでの行政経験や民間経験を糧といたしまして、国や広島県と東広島市をつなぐ「かけ橋」となり、健全な財務体質のもとで本市の持続的な発展を図りますとともに、様々な困難な課題に対しましても、本市の発展のために先頭に立って正面から取り組み、全身全霊をもって市政運営の舵取りを担う重責を全うする覚悟でございます。
議員各位をはじめ、市民の皆様のご支援とご協力を賜ることができますよう、改めてお願い申し上げる次第でございます。
本市を取り巻く諸情勢
次に、本市を取り巻く国内外の諸情勢について申し上げます。
昨年は、アメリカ合衆国の第45代大統領に、国益重視の姿勢を鮮明に打ち出すドナルド・トランプ氏が就任され、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱や、中東和平に向けたプロセスへの混乱が懸念される、在イスラエル大使館のエルサレムへの移設表明などにより、国際社会に大きな衝撃と影響を与えたほか、北朝鮮による大陸間弾道ミサイルの発射や核実験が相次ぎ、世界の安全平和の深刻な脅威となりつつあるなど、激動が続く国際情勢に新たな変化の波が現れた1年であったと思います。
こうした中、一部で不確実性は見受けられるものの、世界経済の循環的な景気回復はその勢いを強めており、国内経済に目を向けましても、「アベノミクス」に象徴される一定の政策の効果もあいまって、昨年12月1日の時点での大学生の就職内定率が86%となり、調査が始まった平成8年以降で最高を更新するなど、雇用・所得環境の改善が続いております。
今後につきましても、経済の好循環がさらに進展する中で、民需を中心とした景気回復が引き続き見込まれておりますことから、国や県をはじめとする関係機関におかれては、活発な投資及び生産活動が地域で展開されますよう、さらなる環境の整備とともに、人口減少や地域経済の縮小などの構造的な問題を克服し、国際社会の中で日本が存在感をさらに高め、確固たる地位を確立していくことができますよう、強力なリーダーシップの発揮に期待するものでございます。
一方、スポーツの分野では、2月9日に開会いたしました平昌(ピョンチャン)オリンピックにおきまして、これまでに、高木美帆選手がスピードスケートの個人種目では日本女子史上初となる銀メダルに輝くなど、日本が合計3個のメダルを獲得いたしました。日本人選手の国際的な活躍に国内が大いに沸き、感動の輪が広がったところでございます。
2年後に開催されます東京オリンピックは、自国開催ということもあり、国全体が盛り上がるイベントになるものと考えておりますが、新国立競技場の建設などに伴い徐々に機運が高まる中で、昨年、本市は、メキシコ選手団の、ゴルフ・レスリング・卓球競技の事前合宿地に決定いたしました。
このメキシコ選手団は、本番の事前合宿に先立ちまして、東京オリンピックに向けた強化合宿を、市民の皆様との交流も含めて実施される予定と伺っておりますが、メキシコには、市内企業も進出されておりますので、こうしたことをきっかけに、経済や文化等の様々な面におきまして、地域間の関係性の強化が期待されるところでございます。
このような国際及び国内情勢の動向にも留意しながら、的確な市政運営を推進していく中で、国際交流や国際貢献の推進、インバウンド需要の開拓など、世界に開かれたまちづくりを常に意識してまいりたいと考えております。
基本認識
次に、まちづくりにおける基本的な認識についてでございます。
先ほど、本市における様々な地域資源及び魅力について申し上げましたが、広島県の中央に位置する東広島市は、海と山を備える地勢の面でも、都市構造や産業構造などの面でも、私たちの共通のふるさとである、広島県の縮図であるとともに、今後、さらなる発展の可能性を秘めた「発展途上のまち」であると認識しております。
また、この東広島市において、あらゆる分野で新たな活力を生み出すための各種の施策を積極的に推進し、持続的な成長と発展を目指す中で成功事例を重ね、その手法を各地に展開していくことで、広島県全体を牽引する地域になることが可能であると確信しております。
そのために、「輝け県央の地、東広島」を合言葉に、市民の皆様と共に手を携え、「仕事づくり」、「暮らしづくり」、「人づくり」、「活力づくり」、「安心づくり」の5つの政策を推進することにより、仕事の面においても、子育てや住みやすさなどの暮らしの面においても、充実した豊かなライフスタイルが実現でき、「仕事も暮らしもナンバーワン」であると、他の地域の皆様からも評価されるようになることで、「選ばれる都市、東広島」を目指してまいりたいと考えております。
まずは、「仕事づくり」でございます。
「恒産なくして恒心なし」という孟子の言葉がございます。ある程度の安定的な職業や財産がなければ、落ち着いた正しい心を持つことはできないという意味でございます。
地域社会の発展には、経済を牽引する「仕事」が生まれることが必要であり、仕事が増えることにより、人が集まり、人が集まれば、新たな仕事ができるといった好循環を目指すことが、行政の責務でございます。こうしたことから、東広島市の産業構造に厚みを加えることで、より強靭で質の高い雇用が継続して生まれる環境の形成を目指してまいります。
とりわけ、本市には4つの大学や、多くの研究機関が立地しており、学術研究機能が集積する人材の宝庫でありますことから、産学金官の連携により、付加価値の高い技術や製品開発能力をもとに、成長分野における創業・起業を支援してまいります。
また、これからの多様な働き方に対応したビジネス環境の充実を図るほか、学生の地元定着にもつながる新たな雇用の創出を目指してまいります。
さらには、農地の貸し手と借り手のマッチングを支援し、遊休農地の解消を図るとともに、中小企業や農林水産業の生産性及びブランド力の向上に向けた支援、担い手の育成などによる経営力の強化のほか、「吟醸酒発祥の地」である東広島市の特色を活かし、魅力ある観光の拠点づくりなどに取り組んでまいります。
次に、「暮らしづくり」でございます。
本市は、まだまだ発展途上のまちでございます。そのため、寺家地区・八本松地区などにおいて、市街地整備事業を推進し、良好な住環境の形成を進めてまいります。
中山間地域などの周辺地域におきましては、豊かな自然環境を保全・活用しながら、住宅取得に係る支援や、空家の利活用対策により、移住・定住を促進してまいります。
また、基礎的な生活圏の中で、様々な生活サービスや地域活動を支える地域拠点の形成を図るとともに、各拠点を市民生活に不可欠な道路や公共交通などのネットワークで結び、有機的なまちづくりを推進してまいります。
さらには、持続可能な社会を構築するため、次世代型の環境都市の形成や、市民一人ひとりが家庭や地域において共に支えあい、健康で安心して、より豊かに暮らせるような共生社会の実現などに取り組んでまいります。
次に、「人づくり」でございます。
あらゆる分野の力の源泉は、「人」であり、社会で活躍できる人材の育成を図るには、幼少期から社会人までの一貫した取組みが必要でございます。
そのため、日本一の教育都市を目指し、学校教育のレベルアップを図りますとともに、教育施設の充実のほか、集合型の学習支援による、世代を超えた貧困の連鎖の対策強化などに取り組んでまいります。
また、地域における活性化や人材としての定着につながる、様々な分野における学生の主体的な地域活動を、より積極的に支援してまいります。
さらには、労働人口の減少が進みつつある社会の中で、テレワークの推進など、働く意欲がある方の希望をかなえるための支援や、男女共同参画及び働き方改革の推進による、家族との時間や自由な時間を大切にできるワークスタイルの実現とともに、高齢者及び外国籍の皆様や、障害の有無等にかかわらず、多様な主体が参画できる社会の実現などに取り組んでまいります。
次に、「活力づくり」でございます。
交流の盛んなにぎわいのあるまちを形成するためには、高速道路や幹線道路など、交通連携基盤のさらなる強化が必要でございます。
そのため、高速道路における4車線化やスマートインターチェンジの設置などにより、ボトルネックの解消を図るとともに、市街地の利便性を高める街路の整備や、幹線道路に直結する道の駅の整備などにより、交流機能及びネットワーク機能の充実を図ってまいります。
また、公的産業団地の分譲率が100%となっておりますことから、仕事づくりの基盤となる産業団地や産業支援インフラの整備を進め、新たな投資を促進するための環境を形成するとともに、中央生涯学習センターの跡地活用など、市の顔となる都市拠点の整備を進めることで、市民生活の質的向上を目指してまいります。
最後に、「安心づくり」でございます。
市民の皆様の安全を確保することは、行政の重要な役割の1つでございます。
医療・介護・福祉や、いつどこで発生するか予測が難しい自然災害など、市民生活に直結した課題について、様々な主体と連携し、社会全体で課題の解決に向けて取り組むことで、全ての方が安心して生活し、幸せを実感できる環境を整えてまいります。
そのため、子育て環境の充実を行うとともに、待機児童の解消など、安心して子どもを産み育てられる環境の整備に取り組んでまいります。
また、誰もが、住み慣れた地域で自分らしい生活を最期まで営むことができますよう、医療の提供体制や地域包括ケア体制の整備・充実を図りますとともに、健康寿命の延伸につながる生きがいづくりや、生涯スポーツ・競技スポーツを推進してまいります。
さらには、地域防災における「自助・共助・公助」機能の連携強化による防災・減災対策の推進、消費者トラブル等の未然防止や抑制などに取り組んでまいります。
こうした基本認識に基づき、全力で市政運営に努めてまいりますとともに、現在の第四次東広島市総合計画の目標年次が平成32年となっており、改訂作業が始まりますことから、これからのまちづくりの基軸となります第五次の総合計画の中で、着実に施策として実現できますよう位置付けてまいりたいと考えております。
平成30年度予算の概要
次に、平成30年度予算案の概要について申し上げます。
この度の予算は、市長就任からの期間が短いことから、新たな政策的経費を極力抑え、義務的・経常的経費を中心とした、いわゆる「骨格予算」として編成しております。
しかしながら、市民生活の安全・安心に資するために必要な経費や、継続事業の進捗に伴い必要となる経費などにつきましては、新たな取組みであっても、市民生活に影響が生じないよう、所要額を計上させていただいております。
それでは、骨格予算における主要な取組みについて、総合計画の5つのまちづくり大綱に沿って、その概要を簡潔にご説明いたします。
はじめに、「個の力が発揮でき、人の力で発展していくまち」でございますが、学校経営アドバイザーや教科等指導支援員、スクールソーシャルワーカーや教育支援員などの、子ども達や教職員をサポートする人的支援により、学校教育をさらに充実させるとともに、生涯大学システムをはじめとした各種講座の開催による生涯学習の質的充実、そして、黒瀬多目的グラウンドの新規開設や安芸津市民グラウンドの改修などのスポーツ施設の整備により、市民一人ひとりが輝き、活躍できるまちづくりを推進してまいります。
次に、「安全で安心な暮らしを地域で支えあうまち」でございますが、東広島版ネウボラの構築といたしまして、出産育児サポートセンターと家庭児童相談室の機能を統合・拡充し、ネウボラの中央拠点として「子ども家庭総合支援拠点」を位置付けるとともに、地域ごとに新たに設置する「地域すくすくサポート」と連携しながら、妊娠・出産から子育て期までの切れ目のない支援体制の構築を進めてまいります。
また、待機児童の解消に向けた保育士の確保につきましては、保育士に対する職務奨励費の支給などにより、待遇の改善を図ってまいります。地域包括ケアシステムにつきましては、地域における介護予防や生活支援サービスなどの活動に対する助成制度を創設してまいります。
さらには、引き続き治水、治山、高潮、雨水対策等により災害に強い基盤整備を進めるとともに、地域防災力の強化につきましては、自主防災組織の活動の支援のための交付金を創設してまいります。
次に、「環境と調和した生活しやすいまち」でございますが、西条中央巡回線、吉行泉線をはじめとした道路整備を進めるとともに、円滑な移動環境の構築につきましては、平成29年度に運行を開始した西条エアポートリムジンや西条市街地循環バス等の利用促進を図ってまいります。
また、環境先進都市の構築につきましては、引き続きS-TOWN(エスタウン)プロジェクトを推進するとともに、ごみの減量化につきましては、地域活動のリーダーとして活動していただくリサイクル推進員の養成に取り組んでまいります。
次に、「交流が盛んなにぎわいのあるまち」でございますが、企業の誘致及び留置につきましては、本市の事業環境の優位性を発信するプロモーション活動やサテライトオフィスの誘致促進助成などに取り組むとともに、雇用対策につきましては、広報型インターンシップ事業や就職ガイダンスなどによる学生の地元定着及び企業の人手不足の解消に取り組んでまいります。
また、農林水産業の振興につきましては、担い手の育成や里山の保全、農林水産物を活用した特産品ブランドの構築による販路拡大等を図るとともに、学会等の開催支援や学生の地域活動の促進、定住サポートセンターを核とした移住・定住の促進等により、地域の魅力の創出と活性化を図ってまいります。
さらには、より効果的な観光施策の展開のために、昨年度に引き続き観光総合戦略の策定を進めてまいります。
最後に、「新たな発想を活かした自立と協働のまち」でございますが、市民協働のまちづくりを推進するとともに、昨年に引き続き、地域おこし協力隊の活動を支援してまいります。
また、公共施設の適正配置につきましては、黒瀬支所の建替え及び機能再編に向けた取組みを推進してまいります。
以上が、平成30年度予算の概要でございまして、一般会計予算は前年度と比較して7.3パーセント減の696億3千万円となっております。
この財源といたしましては、市税305億円余、地方交付税92億円、国・県支出金が142億円余、市債が33億円余などとなっております。
また、特別会計は7会計で319億1千万円余となり、前年度と比較して12.2パーセントの減、水道事業会計予算は62億1千万円余となり、前年度と比較して2パーセントの増、下水道事業会計予算は支出総額96億7千万円余となり、前年度と比較して4パーセントの増となっております。
一方で、先に申し上げました「まちづくり」における基本認識のもと、私が目指す「まちづくり」を実現していくために必要な予算につきましては、出来る限り、早期に編成を完了し、議会へ提出させていただきたいと考えております。
これら新年度予算20件以外の議案といたしましては、人権擁護委員候補者の推薦に係る「諮問」が7件、東広島市志和財産区委員の選任などの「同意案」が26件、東広島市指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準を定める条例の制定など「条例案」が23件、本年度の執行見込等に伴う「補正予算案」が11件、上竹仁辺地に係る公共的施設の総合的な整備に関する財政上の計画の策定など「その他」の議案といたしまして17件、全体では104件の議案を提出させていただいております。
議員各位におかれましては、どうぞ、慎重にご審議いただいたうえ、適切なるご議決を賜りますようお願い申し上げます。
この記事に関するお問い合わせ先
総務部 秘書課
〒739-8601
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更新日:2023年02月17日