○東広島市環境基本条例
平成22年3月5日
条例第2号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 環境の保全及び創出に関する基本的施策(第8条―第18条)
第3章 地球環境の保全に資する施策の推進(第19条)
第4章 情報の提供及び市民等の参画(第20条・第21条)
第5章 東広島市環境審議会(第22条・第23条)
第6章 雑則(第24条)
附則
私たちのまち東広島は、緑豊かな山々に囲まれ、美しい田園風景が広がり、瀬戸内海の多島美を臨む海岸線を有するほか、伝統的な地場産業である清酒製造業に代表されるように、豊富な地下水に恵まれるなど、豊かな自然環境を背景に発展を遂げてきた。
この恵まれた環境は、先人たちから引き継いだかけがえのない財産である。しかしながら、近年の産業の発達と科学技術の進展に伴う私たちの社会経済活動は、より便利で快適な暮らしを求め続ける中で、この豊かな環境に対し少なからず負荷を与えている。その影響は、もはや、身近な環境の悪化にとどまらず、広域的な生態系の破壊や地球規模の気候変動をもたらすまでに至っている。
私たちは、健康で文化的な生活を営むことができる良好な環境を等しく享受する権利を有するとともに、そのもたらす恵沢を将来にわたり享受できるように次の世代へ引き継いでいく責務を有する。今こそ、良好な環境の保全及び創出を図ることが私たちの生活基盤の確保に不可欠なものであることを深く認識し、これまでの社会経済活動や生活様式を見直すとともに、市、市民及び事業者のすべてが、環境の問題を自らの課題として認識し、それぞれの責任の下に相互に連携しながら、社会経済活動がもたらす環境への負荷の低減を図り、限りある資源及びエネルギーの循環的な利用を基調とした持続可能な社会を実現するための新たな一歩を踏み出さなければならない。
ここに、環境の保全及び創出に関する基本原則を明らかにしてその方向性を示し、市、市民及び事業者の連携の下、環境の保全及び創出に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、環境の保全及び創出について基本理念を定め、並びに市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創出に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創出に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の市民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
(1) 環境の保全及び創出 地球環境の保全、公害の防止、自然環境の保護その他の環境の保全並びに過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すための自然環境の再生及び良好な環境の創出並びにその状態の維持管理をいう。
(2) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
(3) 地球環境の保全 人の活動による地球の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに市民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
(4) 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の採掘のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。第8条第1号において同じ。)に係る被害が生ずることをいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全及び創出は、市民が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受し、及び人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるよう適切に行われなければならない。
2 環境の保全及び創出は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全及び創出に関する行動が市、市民及び事業者の公平な役割分担及び協働の下に自主的かつ積極的に行われることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨として行われなければならない。
3 環境の保全及び創出は、生物の多様性の確保に配慮しつつ、自然環境を良好な状態に維持し、及び向上させることによって、人と自然とが共生できるよう適切に行われなければならない。
4 地球環境の保全は、人類共通の課題であるとともに市民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であることにかんがみ、すべての日常生活及び事業活動において着実に推進されなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、自然的社会的条件に応じた基本的かつ総合的な環境の保全及び創出に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 市は、自ら行うすべての施策の策定及び実施に当たっては、環境の保全及び創出に配慮するとともに、環境への負荷の低減に努めなければならない。
(市民の責務)
第5条 市民は、基本理念にのっとり、その日常生活において、環境への負荷を低減し、公害を防止し、及び自然環境を適正に保全するよう努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、市民は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創出に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創出に関する施策に協力する責務を有する。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずる公害を防止し、及び自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。
2 事業者は、基本理念にのっとり、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。
3 前2項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、物の製造、加工又は販売その他の事業活動に係る製品その他の物が使用され、又は廃棄されることによる環境への負荷の低減を図るよう努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するよう努めなければならない。
4 前3項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全及び創出に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創出に関する施策に協力する責務を有する。
(年次報告)
第7条 市長は、環境の保全及び創出に関する施策の総合的かつ計画的な推進に資するため、毎年、環境の状況、環境の保全及び創出に関する施策の実施状況等を明らかにした報告書を作成し、これを公表するものとする。
第2章 環境の保全及び創出に関する基本的施策
(環境の保全及び創出に関する施策の策定等に係る基本方針)
第8条 市は、環境の保全及び創出に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を基本として、各種の施策相互の連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない。
(1) 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。
(2) 生物の多様性が確保されること。
(3) 人と自然の豊かな触れ合いが保たれ、かつ、人と自然が共生することができる環境を確保すること。
(4) 資源及びエネルギーの有効利用並びに廃棄物の減量を図ること。
(5) 地球の温暖化の防止その他の地球環境の保全を積極的に推進すること。
(6) 環境の保全及び創出に関する啓発、教育及び学習の推進を図ること。
(7) 前各号に掲げるもののほか、環境への負荷の低減を図ること。
(環境基本計画)
第9条 市長は、環境の保全及び創出に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全及び創出に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 環境の保全及び創出に関する目標
(2) 環境の保全及び創出に関する施策の方針
(3) 前2号に掲げるもののほか、環境の保全及び創出に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 市長は、環境基本計画を定めるに当たっては、市民及び事業者の意見を反映することができるよう必要な措置を講ずるとともに、第22条第1項に規定する東広島市環境審議会の意見を聴かなければならない。
4 市長は、環境基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
(他の施策との調整)
第10条 市は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境基本計画との整合性の確保を図るものとする。
2 市は、環境の保全及び創出に関する施策と他の施策との総合的な調整を行い、及びこれを推進するための必要な措置を講ずるものとする。
(公共的施設の整備等)
第11条 市は、環境の保全上支障が生ずることを防止するため、廃棄物等の処理施設その他の公共的施設の整備その他の事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(資源の循環的な利用等の促進)
第12条 市は、環境への負荷の低減を図るため、市民及び事業者による資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量が促進されるよう、必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、環境への負荷の低減を図るため、市の施設の建設、維持管理その他の事業を実施するに当たっては、資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量が促進されるよう、必要な措置を講ずるものとする。
(事業者に対する事前の配慮の求め等)
第13条 市は、必要があると認めるときは、事業者に対し、あらかじめ、当該事業者が行おうとする事業活動に関し、環境の保全及び創出について適正に配慮するための必要な措置を講ずるよう求めることができる。
2 前項に定めるもののほか、市は、環境の保全及び創出上の支障が生ずることを防止するため必要があると認めるときは、必要な規制、指導その他の措置を講ずることができる。
(監視、測定等)
第14条 市は、環境の保全及び創出に関する施策を適正に実施するため、環境の状況を把握するために必要な監視、測定等の体制を整備するよう努めるものとする。
2 市は、前項の規定により把握した環境の状況を公表するものとする。
(調査及び研究の実施等)
第15条 市は、環境の保全及び創出に関する施策を適正に実施するため、環境の保全及び創出に関する事項について、情報の収集に努めるとともに、科学的な調査及び研究の実施並びにその成果の普及に努めなければならない。
(環境教育の推進等)
第16条 市は、市民、事業者又はこれらの者の組織する民間の団体(以下「市民等」という。)が環境の保全及び創出についての関心と理解を深めるとともに市民等の環境の保全及び創出に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、環境の保全及び創出に関する教育及び学習の振興並びに広報の充実その他の必要な措置を講ずるものとする。
(市民等の自発的な活動の支援)
第17条 市は、市民等が自発的に行う環境の保全及び創出に関する活動が促進されるよう、技術的な指導又は助言その他の必要な措置を講ずるものとする。
(国及び他の地方公共団体との協力等)
第18条 市は、環境の保全及び創出に関して広域的な取組みを必要とする施策を実施するに当たっては、国及び他の地方公共団体と協力してこれを推進するよう努めるものとする。
2 市は、環境の保全及び創出に関する施策を推進するため、事業者、研究機関、教育機関等との積極的な交流及び連携を図るよう努めるものとする。
第3章 地球環境の保全に資する施策の推進
第19条 市は、国、他の地方公共団体及び市民等との連携の下に、地球の温暖化の防止、オゾン層の保護その他の地球環境の保全に資する施策を積極的に推進するものとする。
第4章 情報の提供及び市民等の参画
(情報の提供)
第20条 市は、市民等が自発的に行う環境の保全及び創出に関する活動の促進に資するため、環境の保全及び創出に関する必要な情報を適切に提供するよう努めるものとする。
(市民等の意見の施策への反映)
第21条 市は、環境の保全及び創出に関する施策の策定及び実施に当たっては、市民等の意見が反映されるよう配慮しなければならない。
第5章 東広島市環境審議会
(設置及び所掌事務)
第22条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定に基づき、環境の保全及び創出に関する基本的事項を調査審議させるため、東広島市環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議する。
(1) 環境基本計画に関すること。
(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全及び創出に関する基本的な方針、基本的な施策及び重要な事項に関すること。
3 審議会は、前項に掲げる事項に関し、市長に意見を述べることができる。
(組織等)
第23条 審議会は、委員20人以内をもって組織する。
2 委員は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する。
(1) 学識経験を有する者
(2) 関係行政機関及び関係団体の代表者
(3) その他市長が適当と認める者
3 委員の任期は2年とし、再任を妨げない。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 前3項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第6章 雑則
(委任)
第24条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成22年4月1日から施行する。
(東広島市環境の美化及び保護に関する条例の廃止)
2 東広島市環境の美化及び保護に関する条例(平成4年東広島市条例第27号)は、廃止する。