主要農作物種子法の廃止に対する新たな条例整備と施策の推進を求める意見書

更新日:2019年12月26日

主要農作物種子法の廃止に対する新たな条例整備と施策の推進を求める意見書

主要農作物種子法は、昭和27年に二度と国民を飢えさせないため、日本の基幹作物である米、麦、大豆の種子の生産と普及を「国の役割」と定めた法律であった。以来、農家の安定的な経営のため、都道府県の各地域の風土にあった品種が開発され、現在、米の種子は100%自給している。この主要農作物種子法が平成30年3月末日をもって廃止された。
政府は主要農作物種子法が廃止されても、種苗法で補えるとしているが、種苗法は種子を開発した企業の知的所有権を守る法律である。主要農作物種子法という根拠法がなくなれば、義務付けられなくなった都道府県は、各地域の風土にあった品種の開発・保全・供給を継続することが困難になることが懸念されるとともに、種苗法だけになれば、民間の知的所有権だけが守られることになる。また、農業競争力強化支援法では、独立行政法人や都道府県が有する種子生産に関する知見を民間事業者に提供することを促進している。このことは民間事業者に、今まで国や都道府県が行ってきた役割を託すためと考えられる。本市には、平成元年に「広島県農業ジーンバンク」が設立され、現在までに遺伝資源として野菜約2,800点、稲約7,800点、麦約3,000点、豆約1,600点、雑穀約1,000点等、計19,000点もの種子が保存されている。今後は、こうした日本人が先祖から受け継いできた種子や、今まで国民の税金で維持管理してきた品種の情報を、民間企業に提供することになり、この情報をもとに開発された品種の知的所有権は種苗法により民間企業のものとして25年間守られ、農家はその間自家採取できない。
これでは種子の公共性が著しく失われ、農作物の生産に支障が生じるとともに農業・農村の有する多面的な機能も失われることが懸念される。
本市は、作付面積が県下最大で、西日本でも有数の稲作地帯を形成するほか、野菜、花き及び果樹など気候や立地に応じて多彩な農業が展開されており、これらの懸念事項は、本市の農業生産者、地域産業従事者そして消費者にとっても、重大な問題である。
規制緩和は民間の活力が投入されて良い点も多々あるが、こと基幹作物の種子に関しては、国民・県民の食の権利を守るという観点から、官の役割も重要と考える。主要農作物種子法廃止に当たっても、参議院では付帯決議として「都道府県での財政措置」、「種子の国外流出の禁止」、「種子独占の弊害の防止」などが求められている。
こうした状況も踏まえ、広島県知事に対し、主要農作物種子法廃止に際し、国民・県民の食の権利と食の安全を守り、農業・農村の持続的発展を維持するために、公共財としての日本の種子を開発・保全・供給するための新たな県条例の制定と施策の推進を、強く要望するものである。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

令和元年12月17日

広島県知事 湯 崎 英 彦 様

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